遺産相続の際、相続人の受け取り分を決める「遺産分割」の対象に預貯金が含まれるかが争われた裁判で、最高裁大法廷は19日、当事者双方の意見を聞く弁論を開きました。
最高裁は年内にも判断を示す見通しで、これまで「預貯金は対象外」としてきた判例を変更するとみられます。
従来から実際上は、不動産を相続しない代わりに預貯金を多く受け取って取り分を調整するというように、相続人全員の同意があれば預貯金も協議の対象とされてきました。
問題となるのは、協議がまとまらず、家裁に審判が申し立てられた場合です。
家裁が判例通りに判断すると、預貯金は分割手続きから除外されるため、生前贈与を受けた相続人などが優遇される事態が起きていました。
最高裁は「預貯金は必ず遺産分割の対象になる」との判断を下すのではないかと考えられます。
ただ、遺産分割協議が整うまで故人の預金が引き出せないとなると、故人の配偶者が当面の生活費や葬儀代の支払いに窮することが想定されるので、速やかな立法が望まれます。
相続法の見直しを検討する法制審議会の部会は18日、遺産分割時の配偶者の法定相続分を現行の2分の1から「3分の2」に引き上げることなどを柱とした中間試案について、「試案のままで議論を進めるのは困難」との意見で一致しました。
同審議会は今後、試案の修正か、代案を検討します。
6月にとりまとめた中間試案では、配偶者の相続分を(1)結婚後に相続財産が一定以上増加した(2)婚姻期間が長期だったなどの場合に増加させるものでした。
しかし、意見公募の結果、(1)について「婚姻後の財産増加額の算定を巡って相続の紛争が複雑化する」、(2)について「夫婦関係が破綻して、配偶者の貢献が認められない場合でも相続分が増加し、公平を害する」など、いずれも反対意見が多数だったとのことです。
税理士界からも(1)については、相続財産の棚卸しに時間がかかるため、申告期限10ヶ月に間に合わないといった声がありました。
(2)についても、いくら長期婚姻だとしても感覚的に3分の2は多すぎて、かえって紛争を招きそうです。
なかなか世論の賛同を得ることは難しいかと思います。
平成28年10月以降に提出する相続税申告書の被相続人のマイナンバー(個人番号)の記載が不要になりました。
従来から「故人から相続開始後に個人番号の提供を受けることはできない」「相続開始前に相続税の申告の為にあらかじめ個人番号の提供を受けておくことは親族間であっても抵抗がある」 などの意見が多く寄せられていたようです。
そこで、税務署としても故人のマイナンバーを入手することが難しいことについて理解を示し、平成28年9月30日に「相続税の申告書への被相続人の個人番号の記載に係る取扱いの変更について」のお知らせを発表し、被相続人のマイナンバーの記載を不要としました。
相続税申告時の資料収集が一つ減ることにはなりましたが、相変わらず「相続人」のマイナンバーの記載は必要です。
今後もマイナンバーの呪縛から逃れられませんので、適正な申告を心掛けましょう。
租税条約に基づく「共通報告基準」により、平成29年1月1日以後に新規開設した海外の口座情報について、100以上の国との自動的情報交換制度が開始されます。
具体的には、平成29年1月1日から銀行、証券会社などの金融機関で新規の口座開設をする場合に、氏名、住所などを新規届出書に記載することを求められ、それらの口座残高、利子・配当金額が国税庁に集約された後に、租税条約締結国へ自動的に情報提供されることになります。
居住者・非居住者(自国人・外国人)にかかわらず、平成29年1月1日以後の新規口座開設について新規届出書の記載が必要なようです。
ただし、金融機関が国税庁へ報告するのは、非居住者(自国の外国人)の情報だけとなります。
今回の自動的情報交換制度は平成29年1月1日以後の新規開設口座についての適用となっていますが、平成28年12月31日以前に開設した口座についても、平成30年12月31日までに情報を特定することになっています。
相続税対策を称して海外口座の開設を促された方も多いかと思いますが、今後はたとえ口座が海外にあったとしてもこの自動的情報交換制度により丸裸にされることでしょう。
また、容易に海外口座の残高が把握できるようになりますので、国外財産調書の提出洩れも指摘されるようになるかと思います。
提出義務があるにもかかわらず、国外財産調書を提出していない場合には、懲役刑などの罰則もありますので、注意が必要です。
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